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「情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる」授業設計モデル
 メディアが伝える情報が児童の生活に強い影響を与えているさまざまな現実を背景として,昨今,情報を読み解く力の育成が重視されてきています。現行小学校学習指導要領では総則において情報モラル教育の必要性が示されました。同じく総合的な学習の時間においては,「情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる」学習活動の実施の必要性が示され,同解説総合的な学習の時間編には指導の観点が例示されています。これらのことは,今後も変化を続けていく情報手段を効果的に活用させ,その際に必要な判断力や心構えを身に付けさせるために示されたものと考えられます。

 しかし現状では,情報モラル教育に対する喫緊の課題意識により,メディア活用から子どもを遠ざけるような対症療法的な教育活動が多く行われてしまっており,学校現場における「情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる」実践研究及び普及啓発に関する活動は十分とは言えません。

 これまでに当研究会代表らは,消費者教育におけるメディアが伝える情報の分析活動を取り入れた実践や授業モデルの開発を行いました(2008,2009)。また,「情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる」授業の事例集及び教員研修の開発(2011)や,東日本大震災に際して得た教訓をもとに,非常時におけるメディア活用に備えた授業の事例作成にも取り組みました(2012)。これらは主として,指導に不慣れな教員のための事例提供でしたが,教員が自ら題材を見つけて授業化したり,メディアの特性を踏まえて指導内容を自己決定し授業を開発したりすることが重要であり,そうした授業設計のノウハウが一般化していないことが課題であると考えています。

 今回,「情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる」授業設計モデルを下記の通り開発しました。これは,稲垣ら(2006)の学校間交流学習のための授業設計モデルの開発に関する研究方法に倣って,授業設計をモデル化するために,「授業構成モデル」と「授業設計の手順モデル」を組み合わせて示したものです。

 ご覧になったみなさまより,忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです。
授業構成モデル 授業設計の手順モデル
   
 (「授業構成モデル」の説明)  (「授業設計の手順モデル」の説明) 
 1) 展開1 「題材に関する文字・映像・音声等の読み取り」「題材と自分とのかかわり・印象の確認」「異なる立場・メディアにより発信された情報の読み取り」をそれぞれ行い,伝えていることを比較することによって,各情報の差異に気づく。      授業のおおまかなねらいや対象領域を考えたり(ステップ1),複数の題材を調査したりしながら(ステップ2),授業のねらいを達成するために効果的な題材を絞り,特徴を分析する(ステップ3)。その後,発話(発問,指示,説明)や学習活動を考えながら授業全体の展開を決め(ステップ4),その授業展開に必要な教材教具を準備する(ステップ5)。
 2) 展開2 展開1で比較した情報の特徴やそれぞれの情報が異なる理由を考え,発信者の意図に気づく。 
 3) 展開3 情報の送り手として留意すること・受け手として留意することを考え,多様な情報を収集したり冷静に判断したりする必要があることに気づく。 
このモデルは,平成25年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(奨励研究)「『情報が日常生活や社会に与える影響を考えさせる』授業設計モデルの開発」による研究成果の一部です。ご高配いただきました関係のみなさまに,心より御礼を申し上げます。
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